必要な情報を短時間で引き出す
いますぐに「生」の情報を手に入れたいとき、あなたはどうしますか?
最も手っ取り早い方法の一つは、「人に聞く」ことです。
ところが、同じ人に、同じくらいの時間でヒアリングをしたはずなのに、質問をした人によって、得られる情報に雲泥の差が出てしまうことがあります。
このような差が出てしまう最大の要因は、相手の話をうまく引き出す「質問力」というスキルが備わっているかどうか。的を射た、よい質問ができると、1つ聞いたことが 10 にも20 にもなって返ってくることがあります。
ビジネスにはスピードが重要です。必要な情報を短時間で相手から引き出すには、「質問力」を鍛えることが強い武器になるのです。
物事の本質をとらえ、問題発見・課題解決に結びつける
「質問力」のスキルが高い人は、問題発見能力・課題解決力にも優れています。
私の経験でも、プロジェクト内で起きたトラブルをすばやく解決できるチームリーダーほど、現場のメンバーに対して、適切なよい質問をし、すばやく解決策を示していました。
「よい質問」というのは、物事の本質を突き止められる質問のことです。
特にトラブルに対しては、根本原因を把握しなければ、問題の解決にはたどりつきません。
表層的な問題ばかりにとらわれていては、プロジェクトは失敗に終わり、ビジネスの継続も危うくなるでしょう。
では、どんなふうに質問すればよいのでしょうか。ポイントは大きく2つあります。
【知りたいことを明確にする】
そもそも何のために質問をするのかというと、「知りたいこと」があるからです。
「私は◯◯について知りたい」、「私は◯◯について明確にしたい」というように、質問の意図や目的を明確にしましょう。
たとえば、プロジェクトの進捗がスケジュール通りにいかず、遅れているとき、次のような質問の仕方を心がけてみてください。
「プロジェクトの進捗が遅れている理由を知りたい。
それぞれのメンバーが抱えている仕事について、量や内容などの問題点をすべて教えてください」
相手が何を聞かれているのかがすぐに理解できるよう、テーマを明確に示す必要があります。
【話を広げ、深く掘り下げていく質問をする】
相手に質問をするときに意識していただきたいのが、話をヨコに広げ、タテに深く掘り下げるという「2つのベクトル」です。
これを意識すると、話の内容が支離滅裂になったり、世間話や井戸端会議で終わったりしてしまうのを防げます。
たとえば、新製品の売上が落ちてきている時に、
「競合他社の状況はどうか?」と効くのが、横に広げる質問です。
さらに、「競合のA社と自社製品はどこが違うのか」や「競合をしのぐにはどんな戦略が考えられるのか」といった質問で問題を深掘りし、自社製品の売上を回復させるための施策を引き出します。
<図表>
新製品の売上げが落ちてきている。なぜか。
A社は? B社は? C社は?:広げる質問
A社と自社の違いはどこか? :深掘りする質問
競合をしのぐ戦略は何か?:深掘りする質問
数字は「絶対数」だけで捉えない
ビジネスを成功に導くには、数字を読む力が欠かせません。
ビジネス数字には「絶対数」と「相対数」があり、その違いを把握することが重要です。
たとえば、100km マラソンの完走を目指していたのにゴール前5km 地点でリタイアしてしまったのと、フルマラソン(42.195km)のゴール前5km 地点でリタイアしてしまったのとでは、5km の重みはどうでしょうか。
100km に対してはあと5%目標に足らず、フルマラソンに対してはあと約 12%目標に足りません。
このように数字には絶対数と相対数があることに注意し、この2つの視点から数字の重みを理解することが重要です。
仕事上では、より「相対的なインパクトが強いほう」に力をかけましょう。
なぜなら、それぞれのプロジェクトや仕事にかけられる人材、時間、コストは限られているからです。
人・モノ・金をどこにどうやって振り向けていくのが効率的なのか。
投資対効果を念頭に起き、「選択」と「集中」を見極めていくことで、最短時間で最大の成果を得ることができます。
相対数とは、比較の対象があり、それと比べたときに計った数値です。
相対数を導き出すきの比較のポイントを3つ紹介しましょう。
【母数を比較する】
売上げが前年比で 100億円ダウンしたと言われると、大幅な減収という印象を受けます。
母数(全体の売上高)が1兆円の企業なら、1%の減収です。
【他と比較する】
中小企業が多い化粧品業界で、年商 1 兆円の売上高があったらすごい企業だと感じるでしょう。
しかし、それはその業界での「絶対数」での評価に過ぎません。
自動車業界と比べると売上げトップのトヨタ自動車1社にも及びません。
【過去と比較する】
今年度の売上高は 8,000 億円です。
ところが、2年前には売上高1兆 5,000 億円あったとしたら、非常に大きな問題を抱えている可能性が数字に示されています。
絶対数というのは、純粋なそのものの数字です。
それだけを見ていたら、実態がつかめず、課題への対策が遅れてしまいます。
全体や過去、他と比べてどうかという相対数を常に意識して数字を読み取り、資料作成のときなどに出力できる力を備えることが重要です。
出典:「仕事が早い人は『見えないところ』で何をしているのか?」(木部智之著)