共育のタネ

【Sample】2.「たぶん」「おそらく」がもたらす悲劇

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物事を推測で語らない。事実だけを突き詰める。

A社へのプレゼン後、念のため、担当部長にダメ押しのアプローチをするように、部下に指示をしました。
ところが、部下は、
「たぶん、うちが受注できたと思いますよ。A社さんとうちの付き合いは長いですからね」
と言って、先方の感触を確認しようとしません。

後日、A社にプレゼンの補足資料を届けたという競合他社に受注が決まってしまいました。
このように「推測」、「憶測」で物事を考え、行動してしまうことには、大きなリスクをはらんでいます。
事例を挙げましょう。
ある製造メーカーの営業部内での会話です。
どこに問題点があるのかわかりますか?

Zさん「部長、A社から納期を一週間早めてほしいという連絡がきました」
部長「一週間ね。先日も別件の納期を早めてくれたから、うちの製造部門なら大丈夫だろう」
Zさん「では、A社に納期早めますと連絡しておきます」

ところが、製造部門にオーダーしてみると、納期を早めることができませんでした。
一度は対応できると言ってしまったため、クライアントからは不信を買ってしまいました。
このやりとりの問題点はどこにありますか?

問題は、部長の対応にあります。
自社の製造部門が「別件の納期を早めてくれた」のは、事実です。
しかし、「うちの製造部門なら大丈夫」というのは部長の主観であり、今回も納期を早められるだろうというのは、勝手な憶測です。
実際は、製造部門は受注が重なっててんてこ舞いしており、納期を一週間も早めることは難しかったのです。
部長が憶測で即答せず、製造部門と打ち合わせをしてからA社に回答すれば、誠実な姿勢を示すことができ、不信を買うことはなかったはずです。
このように、「たぶん」や「おそらく」といった推測・憶測は大きなリスクをはらんでいるということです。
外資系企業では、このような状況を招かないように、「No Guess(ノーゲス=推測しない)」という言葉で「推測をしない」、「事実だけに注目する」ことを意識するように徹底されます。
私は、相手の話を聞くときに、推測や憶測が含まれていると感じた事柄については、必ず、「根拠」を確かめることを心がけています。

事実を確認せずに会話を進めてしまうと、「恐らくこういうつもりで言ったのだろう」とか、「こう言えば、はっきり言わなくてもわかってもらえるだろう」というように、互いの勝手な思い込みによって情報が交錯し、コミュニケーションがうまくいかなくなることがあります。
また、物事を判断するために必要な情報を「後で確認しよう」というのもよくありません。
推測で補えば、間違った方向に行きやすくなります。
さらに、時間が経てば経つほど記憶があいまいになり、言った、言わないの水掛け論が始まります。
根拠や事実は、その場で確認しましょう。

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出典:「外資系コンサルの仕事をサクサク片づける法」(吉澤準特著)

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